まるは茶業グループ DX基本方針 2026 (統合版) Ver2.1
【第1部】DX基本方針(公表媒体用)
0. トップメッセージ(実務執行総括責任者)
まるは茶業グループのDXは、単なるIT化ではない。私たちは、茶園・工場・物流・販売・管理のあらゆる仕事をMQ(限界利益×数量)に構造的に直結させ、判断を人の勘と根性から、再現可能な仕組みへ移す経営変革と定義する。
外部環境は「追い風」と「向かい風」が同時に来ている。抹茶(碾茶)需要拡大による原料の取り合い、資材供給の不確実性、働き手不足、気象変動、物流費上昇…。当社はこれを「単一商品に賭ける」ではなく、特性の異なる2つの収益モデルを同時に磨くポートフォリオ(両利き)戦略で乗り越える。
高付加価値モデル(抹茶・碾茶、直販等):単価と品質で伸ばす
高効率モデル(ドリンク原料等の契約栽培・量の安定):省人化で伸ばす
両モデルをMQ会計(限界利益管理)で統合し、市場変動や制約に強い経営を実装する
1. 外部環境・経営課題(機会とリスク)
1-1. 機会:抹茶(碾茶)高付加価値市場の拡大
抹茶需要の増大は事業機会である一方、原料(碾茶)・加工能力・物流がボトルネックとなりやすい。当社は販売だけでなく、戦略的原料の確保と供給設計(保管・移動・加工・品質)までを競争領域として捉える。
1-2. リスク:資材供給の不確実性(肥料等)
資材の価格・供給は外部要因で変動し得る。よって当社は、調達を「購買」ではなく、事業継続(止まらない)設計として扱い、重要資材の複線化・代替・在庫ルールを運用する。
1-3. 制約:働き手不足・技能継承・分散オペレーション
人手不足は採用努力だけで解決しない。当社は作業のタスク化・標準化により、少人数でも回る運用、兼業人材でも参加できる運用へ転換する。
2. 当社のDX定義(DX × 環境整備 × PDCA日記)
DX(実装・骨格):全業務をMQに直結させ、判断を再現可能な仕組みとして実装する経営変革である。
環境整備(メンテナンス・代謝):MQに直結しない仕事を排除・再設計・自動化し続ける、日常化された事業仕分けである。
PDCA日記(センサー・検証):仕事がMQに直結しているか、人に依存していないかを、日々可視化する観測装置である。
2-1. MQ(共通言語)
MQ = Σ(限界利益(単位当たり) × 数量)
限界利益(単位当たり) = 売価 − 変動費(資材・外注・物流・エネルギー等)
DXの評価は「導入したか」ではなく、価格(P)・数量(Q)・変動費(V)・ロス(L)・稼働(O)がどう変わりMQがどう増えたかで判断する。
3. 経営ビジョンとビジネスモデルの方向性(設問(1)対応)
3-1. 経営ビジョン
当社は茶業の価値を「データで再現できる品質・収量・原価」に転換し、MQ(限界利益×数量)を最大化する。同時に、資材・人手・気象・原料制約を前提に、“止まらない茶業モデル”を確立する。
3-2. 情報処理技術の活用(ビジネスモデル)
現場(圃場・ロット・工程・販売・管理)の出来事をデータとして取得する(入力・機器・連携)。
ロット・圃場・工程・販路で統合し、トレーサビリティとして一気通貫で追跡可能にする。
MQツリー(経営の共通画面)で可視化し、意思決定と優先順位を統一する。
PDCA日記で検証し、環境整備で業務を代謝し、DXで仕組み化する。
4. DX戦略(設問(2)対応)— 重点テーマ
当社はDX戦略を、特性の異なる2つの勝ち筋に束ねて実行する。両者をMQ会計で統合し、市場環境・人員・設備制約に応じて構成比を最適化する。
勝ち筋A:高付加価値モデル(抹茶・碾茶/直販等)
狙い(MQレバー):単価↑/上位比率↑/品質ロス↓/欠品ロス↓
テーマA-1:戦略的原料(碾茶)調達・配分DX
需要(販路別)→必要原料→確保→配分→加工計画までを一本化する。
調達の属人性を排し、契約・品質規格・受入判定の標準を整備する。
用途別に「MQ(円/kg)」を可視化し、配分・販売の意思決定を再現可能にする。
KPI例:原料確保率/契約充足率(欠品率)/上位グレード比率/用途別MQ(円/kg)
テーマA-2:仕上げ加工DX(当社コア:再現可能な品質・原価)
管理責任:仕上げ加工統括(製造統括)を置き、ロット・配合・工程条件・品質・原価の管理責任を負う。
ロットIDで「原料→仕上げ→出荷」を紐づけ、追跡可能にする。
加工実績(工程条件・時間・停止・不良・再加工)を記録し、歩留まり・ロスを削減する。
品質判定のルール化により、人依存の判断を減らす。
KPI例:歩留まり/再加工率/格下げ率/加工コスト/kg/納期遵守率/クレーム率
テーマA-3:保管・移動・ロジスティックスDX(品質とコストを同時に守る)
ロット追跡(入出庫・移動・在庫)を標準化し、緊急対応・積替・滞留を減らす。
温湿度等の品質影響要因は、必要に応じて記録・可視化する。
KPI例:物流費/kg/移動回数/ロット/滞留在庫日数/劣化ロス率
勝ち筋B:高効率モデル(ドリンク原料等の契約栽培/量の安定)
狙い(MQレバー):数量の安定↑/MQ/人時↑/作業時間↓/計画遅延↓
テーマB-1:広域茶園の少人数管理DX(省人化の極限)
作業をタスク化・標準化し、少人数で管理できる面積を拡大する。
記録・遠隔把握・機械化を組み合わせ、作業計画と実績を一体運用する。
KPI例:管理面積/人(ha/人)/人時/ha/人時/kg/作業遅延率/契約達成率
テーマB-2:兼業人材の仕組み化(繁忙期の労働供給を設計)
スキルマップ×タスク割当、手順と判定の標準化、スマホ完結の作業報告を整備する。
繁忙期の山(摘採・搬送・選別等)を吸収し、数量の下振れを回避する。
KPI例:兼業参加人時/兼業タスク合格率/受入検査手戻り率
テーマB-3:資材・調達DX(止まらない設計)
重要資材をランク化し、複線化・代替・安全在庫・価格ルールを運用する。
調達判断を「人」ではなく「基準」と「データ」で再現可能にする。
KPI例:複線化率/代替手当率/安全在庫日数/資材コスト/ha
テーマB-4:点滴施肥(点滴チューブ液肥)は「実証テーマ」として段階導入
設備費が大きいため、当社は全社展開の前に実証で投資判断する。
ステージゲート:①小規模実証(圃場限定)→②効果検証→③投資判断→④拡大
評価は「MQに直結する指標」で行い、回収期間(例:3〜5年)を満たす場合に拡大する。
KPI例:肥料費/ha/N投入量/ha/収量kg/ha/品質指標/施肥作業時間/ha
中長期テーマ:荒茶工場の集約化・共同化
荒茶工場は個別農家運営であるため、短期での集約化・共同化は現実的ではない。中長期での構造改革テーマとして位置付け、段階的に検討する。
短期(すぐやる):外部荒茶工場「連携DX」(受入予約、品質規格、ロット、納期、精算の標準化)
中期:共同在庫・共同物流・設備稼働枠の可視化
長期:希望者・条件が整った地域から、共同化・集約化の選択肢を持つ
5. 達成指標(設問(3)対応)— MQ中心のKPI体系
5-1. 企業価値(最上位KPI)
グループMQ(円)
MQ/人時(円/人時)
MQ/ha(円/ha)
5-2. 効果KPI(勝ち筋別)
勝ち筋A:原料確保率/契約充足率/用途別MQ(円/kg)/上位比率/歩留まり/再加工率/物流費/kg/滞留在庫日数
勝ち筋B:管理面積/人/人時/ha/人時/kg/作業遅延率/兼業参加人時/重要資材複線化率/肥料費/ha(点滴実証は対象圃場のみ)
5-3. 進捗KPI(「回る仕組み」の指標)
PDCA日記:日次入力率/改善起票数/改善完了LT(リードタイム)
MQツリー紐づけ率:主要業務のうちMQに紐づく比率
データ整備率:ロット・圃場・工程・原価・顧客マスタ整備率
RAG稼働指標(2026年2月導入):参照可能ナレッジ件数/検索回答時間/問い合わせ削減件数
6. ロードマップ(2026〜2028)— 2026年2月RAG導入
Phase 1(2026年2月〜):骨格づくり(まず「回る」を優先)
2026年2月:RAG(社内ナレッジ検索)導入開始(対象:手順書、規格書、品質基準、過去トラブル、教育資料、可能ならPDCA日記)。
MQツリー定義、ダッシュボード最小版の稼働。
仕上げ加工DX:実績入力とロット紐づけの開始。
外部荒茶工場「連携DX」開始(予約・受入規格)。
Phase 2(6〜18か月):改善の定例化(環境整備が常態化)
仕上げ加工:歩留まり・再加工・格下げのトップ要因を潰す。
物流:滞留在庫・緊急配送・積替回数を削減。
契約栽培:少人数管理のKPI(面積/人・人時/ha)を改善。
点滴施肥:小規模実証→定量評価→投資判断。
Phase 3(18〜36か月):最適化と強靭化(中長期テーマへ)
需要予測・在庫最適・資材最適の高度化。
外部荒茶工場:共同物流・共同在庫の検討。
条件が整う地域から共同化・集約化の選択肢を持つ。
7. 推進体制(ガバナンス)
実務執行総括責任者(社長)が最終責任を負い、MQをKPIとしてレビューする。
社長直轄のDX推進体制(DXプロジェクト)を中核に、現場・製造(仕上げ加工)・調達・物流・販売・管理が参加する横断体制で推進する。
データオーナー制度:圃場/ロット/工程/原価/顧客/ナレッジ(RAG)ごとに責任者を定め、データ品質と運用を守る。
毎月実施する環境整備点検にて運用状況を確認し、改善を継続する。
8. サイバーセキュリティ
DXが進むほどサイバーリスクは事業継続リスクとなる。当社は基本対策(権限管理、バックアップ、更新運用等)を継続する。また、RAGは社内文書を扱うため、情報分類とアクセス権、参照ログの取得、誤回答の是正(ナレッジ更新)を実施し、機微情報の漏えい・混線を防ぐ設計と運用を行う。
9. 付則
本方針は、外部環境・技術動向・経営状況を踏まえ、少なくとも年1回見直す。